【ヒトとトキ♯10】キャスターCRO・石倉秀明さん「自分がいい状態でいるため、時間の使い方を崩さない」

2014年に創業し、リモートワークの会社として日本ではNO.1の規模を誇る「キャスター」。自身も長年リモートワークを実践してきた取締役CROの石倉秀明さんは、見事なワークライフバランスを実現している模様です。そんな石倉さんに、時間管理のコツや現在の働き方に至った経緯などを聞きました。

「キャスターで働いているなんてすごい」と言われるような会社に

ーーキャスターの事業と規模について教えてください。

石倉秀明さん(以下、石倉さん) 2014年9月に「リモートワークを当たり前にする」をミッションに掲げて創業しました。人事や経理、営業などの14のオンライン人材サービスを提供しています。導入企業数は2500社を突破。47都道府県、22カ国に在籍する800人以上のメンバーがフルリモートワークを実施しています。

ーー従業員同士のコミュニケーションはどうやって取っているのですか?

石倉さん 基本は、チャットツールのSlackなどを使ってテキストでやりとりしています。定例や経営会議などでオンライン会議を行うことはありますが、頻度や時間は最少限にしています。

ーー本社はどのような機能を果たしているのでしょうか?

石倉さん 本社は宮崎県西都市にあって、総務的な業務を行っています。行政から届いた書類を処理したり、メンバーに貸与するパソコンをセットアップして発送したり、ですね。

ーー石倉さんは2016年から取締役としてキャスターで働いていますが、仕事のやりがいや楽しさはどんなところにありますか?

石倉さん キャスターって、世の中的にはまだ変わった会社だと思うんですよね。だから、キャスターを選んで働いてくれている人たちが、周囲から「キャスターで働いているんだ、すごいね」と言われるように会社を成功させたいですね。退職して転職活動するとき、「キャスターにいたなら大丈夫だね」と採用されたら嬉しい。そうした会社に成長できるよう責任感を持って働いています。

ーーそう思ったきっかけはあったのですか?

石倉さん 僕自身、リクルートHRマーケティング(現・リクルートジョブズ)やDeNAなどで働いていたことから、キャリア的に強そうに思われるんですけど、それは会社が有名で一緒に働いていた人たちがすごかったから。そういった経歴もあって、僕の本来の実力よりも多分すごそうに見えるんですよ。でも、経歴を見た人からオファーをいただいて、それをこなすうちに力が身についたこともあるなと。また、創業した頃に入社してくれたメンバーには、やっぱり幸せになってほしいですね。当時、キャスターに入社するのは、とてもリスクのあることだったと思うので。

体や心の状態が悪くても仕事でパフォーマンスを出す工夫をする

ーータイムスケジュール表を用意したので、1日のスケジュールを書いていただけますか?

石倉さん 9時から17時半頃まで、1日8時間くらいしか働いてないんですよね。

ーーえっ!! お忙しそうなのに意外です。

石倉さん ミーティングが詰まっている日はそれをこなして。あとは執行役員や株主と議論したり。事業に関しては執行役員が充実しているので、基本はお任せしています。僕は「こうした方がいいんじゃない」って言うおじさんみたいな感じです(笑)。

ーーなるほど。子育てにたくさん時間を割いてますね。

石倉さん 8時過ぎに5歳の娘を保育園に送って、帰ってきて仕事。途中、犬の散歩やお昼の買い物をして。17時半に子供を迎えに行ったら、妻が夕飯を作っている間に子供と遊んで。食べ終わったら一緒にお風呂に入って、歯磨きと寝かしつけですね。その後3時間くらい、本を読んだり、YouTubeNetflixを見たりします。

ーービジネス関連の本を読まれるのですか?

石倉さん ビジネス書はほとんど読まないです。自分で書いておきながらなんですけど(笑)。哲学や歴史、心理学の本を中心に読みますね。今は行動経済学に超興味があって。人がどうやって経済行動を起こすか、たとえば報酬と罰のどちらを与えたほうが行動するのかなど、研究者によって実証されているんです。仕事をするうえで、人間の行動や心の原理を学ぶことを大切にしていますね。

ーー趣味は?

石倉さん 娘です!

ーー即答ですね(笑)。

石倉さん 僕、娘にだけは嫌われたくないんです。ほかの人には何を言われてもいいんですけど(笑)。かつて、僕が「働き方ファーム」を起業したきっかけも子供が生まれたからでした。働く場所や時間を自分で決めて実践できる社会を作りたいと思ったんです。

ーー石倉さんにとっての子育ての楽しさって何ですか?

石倉さん 子どもの反応が、僕にとっては常に新鮮なんです。純粋に物事を考えるんだなって。子育てにくらべたら会社のマネジメントなんて簡単だなって思います。大人は言葉通じますから(笑)。

オフになる時間を作るためにノートPCは家に持ち込みません

ーー石倉さんのようなワークライフバランスを誰もが実現できたらいいですね。

石倉さん 実は、サラリーマンのときはめっちゃ働いていたんですけど、体力がないうえにストレスにも弱くて。月に1回は胃腸炎にかかたし、パニック障害にもなりました。体調を崩すのが金曜の夜から土日だったので、上司や同僚には丈夫な人だと思われていたんですが。でも、こうした経験から、体や心の状態が悪くても仕事でパフォーマンスが出せるよう工夫できるようになりました。特に年齢を重ねると、調子がいいときの方が少ないじゃないですか。100%いいときはないという前提で仕事しています。

ーー具体的にはどんなことをしているんですか?

石倉さん オフになる時間をちゃんと作る。そうしないといくらでも仕事ができてしまうのがリモートワークのデメリットなので。4カ月前から自宅近くにワンルームを借りて仕事しているんですけど、あえてノートPCを置いて帰宅するようにしています。家ではスマホでSlackの返信をするくらいです。

ーー家ではノートPCを使わないんですね!

石倉さん いつもtodoは溜めずにすぐ消化しています。todoリストを作るのは、実は効果的ではないんです。メールやSlackは返信ボタンを押してから、何を返信するかを考える。すぐに答えが出せない場合は、「また後で返します」と返信。キャッチボールのボールは抱えない状態にしています。

ーーストレスを溜めない工夫はしていますか?

石倉さん ビジネス書を読まないことですね。「みんなすげー!」となって劣等感を覚えるから、なるべく距離をとります。ストレス溜まったら、たくさん寝ます。半日とか、子どもより長く寝ることもありますね。

Twitterは毎日の習慣。「テーマ×情報の種類」で認知度は上がります

ーー1週間を通して習慣にしていることはありますか?

石倉さん 月曜と木曜は、9時からパーソナルトレーニングジムに通っています。動かないと太っちゃうんで、運動習慣をつけようと。週末は、午前中に子供と外に遊びに行って、午後はお昼寝して、16時以降は平日と一緒ですね。あ、Twitterはほぼ毎日してるかな。

ーーTwitterってどうやったらビジネスに上手く活用できるんでしょうか?

石倉さん ある程度認知されるまでは何でもかんでもつぶやかずに、テーマを絞ってつぶやくことですね。僕の場合なら、リモートや採用、会社経営。そのテーマを、宣伝、意見、主観など、どういう情報として発信するのかで伸び方は変わります。「テーマ×情報の種類」でいろいろ試して、一番反響が多い掛け合わせでつぶやくと伸びやすいと思います。僕は始めた頃、仕事で知り合ったマーケターのえとみほ(江藤美帆)さんやゆうこすにTwitterのコツを聞いて、愚直に真似していました(笑)。

ーー最後に、石倉さんの仕事時間との付き合い方をひとことで言うと?

石倉さん 心も体も調子が悪い時間をなるべく作らないこと。そのために、スケジュール管理はギチギチにしない。土日は仕事しないとか働きすぎないようにして、自分がいい状態でいるための時間の使い方を崩さないようにしています。

ーー仕事との距離感って大切ですね。石倉さん、今日はありがとうございました!

Profile

石倉秀明(いしくら ひであき)

1982年生まれ。群馬県出身。株式会社リクルートHRマーケティング入社。2009年に当時5名の株式会社リブセンスに転職し、事業責任者として入社から2年半で東証マザーズへの史上最年少社長の上場に貢献。その後、株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)のEC事業本部で営業責任者を務めた後、新規事業・採用責任者を歴任。2016年より800人以上のメンバーがほぼ全員リモートワークで働く株式会社キャスターの取締役COOに就任。2021年7月より取締役CROChief Remotework Officer)に。平日深夜の報道番組『FNN Live News α』(フジテレビ系)のコメンテーターとしても活躍。著書に『これからのマネジャーは邪魔をしない。』(フォレスト出版)ほか。

キャスターHPhttps://caster.co.jp
Twitter:@kohide_I
note:https://note.com/hideakiishikura

撮影/武石早代 取材・文/川端美穂(きいろ舎)