【ヒトとトキ♯16】エニタイムズ代表・角田千佳さん「時間と心に余裕を持つことを大切にしています」

日常の困りごとを解決するスキルシェアサービスの「ANYTIMES(エニタイムズ)」と複合型シェアサロン「Qnoir(クノア)」を立ち上げ、各会社の代表を務める角田千佳さん。東京とミラノ近郊で二拠点生活を送る角田さんに、プライベートを充実させながら働くための時間管理のコツを聞きました。

独立・開業・副業が安心してできる仕組みを作りたい

角田千佳さん

――スキルシェアサービスの「ANYTIMES」、複合型シェアサロン「Qnoir」といった、シェアリングエコノミー事業を2つ手がけていらっしゃいますね。まずは、 ANYTIMESについて教えてください。

角田千佳さん(以下、角田さん) 2013年にリリースしたANYTIMES は、家事や家具の組み立て、ペットの世話など、日常のちょっとした用事を依頼したい人と、仕事をしたい人をつなげるスキルシェアサービスです。利用者は約8万人で、アプリを介して個人間の取り引きができます。

――いまお邪魔している東京・北青山のこちらの複合型シェアサロン・Qnoirは、どういったサービスなんですか?

角田さん Qnoirは、主にフリーランスとして活動する美容・健康業界の多種多様なプロが登録している複合型シェアサロンです。2019年にサロンと連携するアプリ「Qnoirも同時にリリースしました。このシェアサロンは24時間365日利用可能で、原則無人運営。美容室、エステ等の個室、スタジオ、ネイル・まつエク、ラウンジ5つのゾーンにわかれていて、お客様からの予約が完了すると自動的に場所を確保できる仕組みになっています。プロのスキル、サロンという場所、お客様といった3つをシェアできる新しいかたちのシェアリングエコノミーなんです。

ーープロの方々はどうしたら登録できるんですか?

角田さん まずはサロン現地での説明会にご参加頂いた後、オンラインで面談を行い、その後テクニカルチェックに通過した方がプロとしてご登録頂ける仕組みとなっています。プロの方にとって、開業資金や毎月の固定費を大幅に削減でき、オリジナルのシステム(アプリ)により、お客様のご予約から決済、売上管理、スペース確保まで一元管理もできるというメリットがあります。ANYTIMES と同様に、安心して独立や開業ができたり、いまの勤務を続けながら副業を始められたらいいなと思い、始めたサービスなんです。私自身が会社で働いたり転職したり、起業したときの経験から、もっと柔軟に働き方の選択肢を豊富にした社会を作りたいと始めました。

「食事は家族一緒が当たり前」というイタリア文化に馴染むまで

ーー角田さんのお仕事内容についても教えてください。

角田さん エニタイムズの仕事は、システム開発と運営がメインです。また、スキルシェアサービスを企業様に提供するOEM事業も行っているので、その事業開発なども行っています。Qnoir のほうは、システム開発との運営、サロン運営、カスタマーサポート、企画やマーケティングを基本2人でこなしています。

美と健康の複合型シェアサロン「Qnoir(クノア)」は、2019年にオープン

 

ーー会社経営をしながら実務もたくさんこなしていて、すごくお忙しそう……

角田さん どの仕事もすごく楽しいです(笑)。エニタイムズはメイン社員5人なのですが、加えて、それぞれのプロジェクトごとにフリーランスのエンジニアやデザイナーたちと業務委託契約を結んでいます。また、20171月からフルリモートワーク化しました。私は34年前から、東京とイタリア・ミラノ近郊の二拠点生活をしています。

ーー二拠点生活を始めたきっかけは?

角田さん ミラノ出身の夫と結婚したからです。いままでは日本とイタリアに64の割合で滞在していたんですけど、2月にイタリアで出産予定なので夏頃まではしばらくイタリアに滞在する予定です。

ーー日本にいるときは単身赴任なんですか?

角田さん いえ、必ず夫と一緒です(笑)。お互いの家族と定期的に会うためにも。イタリアって、パートナーをはじめ家族をとても大事にする文化なんです。夫は飛行機の席が少しでも私と離れると、パニックになってしまいます(笑)。

ーーイタリアの文化や生活にはすぐ慣れたんでしょうか?

角田さん 夫と付き合って最初の、新しい価値観や気付きも多くありました。イタリアでは、ランチもディナーも「家族一緒に」が基本。夜は1920半頃にアペリティーボといって食前酒やおつまみを楽しむ時間のあと、20時半〜21時にディナーが始まります。当時は東京でしたので、特に私の仕事中心のライフスタイルや日本の会食文化についてなどは、何度も話し合いました。しかし、合理的に考え、実践してみたら生活にメリハリができ、逆に仕事の効率が良くなったんです。仕事の会食もなくしたので、睡眠時間もたくさんとれるようになって健康になりましたし、とても感謝しています。

ーー結婚で生活がガラリを変わったんですね。

角田さん 夫と出会った当初の私は仕事人間で、仕事中は全然連絡を返さず怒られたことも。お付き合いするうちに、家族の大切さや人生で何を大事に生きるかを改めて見直していきました。8年前、「日本社会を変えたい」と起業したのですが、日本を変える前に、まずは自分の働き方や人生で大切なものを見つめ直す必要があったんだと思い知りましたね。

ーーちなみに夫婦間の言語は?

角田さん 基本は英語ですが、3つの言語が混ざったオリジナル言語で会話をしています(笑)。夫は「しょうがない」「面倒くさい」といった日本語ならではの言葉は少し話せます(笑)。感情を表す言葉はイタリア語のほうが豊富で使いやすいので、私は感動したときは「ブラーボ」や「ボーノ」などのイタリア語を使うことが多いです

時差のあるスケジュールをこなすため、8時間睡眠は必須!

ーータイムスケジュール表を用意したので、1日のスケジュールを書いていただけますか

角田さん 日によってスケジュールが全然違うので、イタリア滞在中のある日のスケジュールを書きました。イタリアは日本と78時間の時差があるため、日本で午前中に行われるミーティングや講演ときは、午前2時や4時に起きることもよくあります。

ーー大変ですね。睡眠時間が削られて疲れませんか?

角田さん すごい早起きをする日は早く寝るので大丈夫です。寝ないと体調を崩すタイプなので、食事以上に睡眠をとることを大事にしています。毎日8時間くらいは寝ていますね。

ーー飛行機での移動疲れや時差ボケはどう対処されていますか?

角田さん いままさに時差ボケ中ですけど、慣れました。飛行機ではほとんど食事をとらず、寝て疲れを取ります。どこでも寝られるタイプなんです(笑)。先ほどQnoir で予約して、まつエクの施術を受けていたんですが、その最中もぐっすり寝ちゃってました。

ーーランチは必ず1時間とるのでしょうか?

角田さん はい。義理の家族がイタリアでスパやプール、ジム、レストランなどの複合型施設を経営していまして、その中のレストランで食事をすることが多いです。夫と義母、義妹、義理のいとこたちと毎日一緒にランチやディナーをとっています。イタリアのディナー中は日本の深夜にあたるので、仕事関係者やユーザーさんからの緊急連絡がないんです。そのおかげでスマホを見ず、ゆっくりと家族の時間を過ごせています。私はお酒が飲めないので、ノンアルコールカクテルなどを嗜んでいます。

ーーランチやディナーなど、どうやって旦那さんとスケジュールを合わせているのですか?

角田さん お互い基本オンラインで柔軟な働き方をしており、ほぼ同じ場所で仕事をしていることが多いので、大体一緒にいるのと、お互いの予定を共有するAppleカレンダーあるので、そこで大まかな予定把握してます。

ーー食後のリラックスタイムは何をして過ごすのですか?

角田さん ほぼ毎日、夫と映画かドラマを観ています。もともといつも人と一緒にいるタイプじゃなかったんですけど、長く過ごすうちに夫が自分のからだのパーツみたいになってしまって(笑)。一緒にいると落ち着きます。

ーー週間スケジュールのご記入もお願いします!

角田さん 本当に日によってさまざまで。土日も仕事していますし、こんな感じでしょうか。

ーー完全オフの日はないんですね。

角田さん パッと見、休みがないように見えるかもしれないんですけど、休みはちゃんととっています。旅行先でオンラインミーティングなどの仕事をこなすこともありますし、睡眠時間を確保しながら1日を自由に使っています。

仕事のしすぎで体調を崩した経験から、時間との向き合い方を一変

ーー実際に生活してみて、イタリアの魅力とは?

角田さん 自宅はミラノから車で約30分の郊外にあるんですけど、歴史的な建造物が多く、自然が多いところが気に入っています。食事はオリーブオイルと塩などシンプルな味つけで、旬の食材の味をいかした料理が多くて、季節を身近に感じられるところが好きですね。そして何より、家族友人との時間を何よりも大切にする文化がとても好きです。

ーーイタリアでは家事などのシェアリングエコノミーは普及しているんでしょうか?

角田さん イタリアはIT後進国といわれていて、アプリを使ったシェアリングエコノミーサービスはまだまだですね。ただ、昔から家政婦さんやベビーシッターさんを毎日依頼している家庭多く、家事をアウトソーシングすることは日本よりも一般的。また、家のなかをとてもきれいにしている家庭が多いですね。

ーーでは最後に、角田さんの仕事時間との付き合い方をひとことでいうと?

角田さん 余裕を持つことを大事にしています。もともとスケジュールが空いていると詰め込みがちで、「最大限仕事したい!」というタイプだったんです。でも、そのせいで体調を崩し、34年前には子宮筋腫で人生初の手術を経験しました。当たり前のことですけど、そのとき体調管理の大事さを思い知りまして。時間や心に余裕がないとどこかで体調を崩し、結果的に仕事が非効率になってしまう。なので、いまは余裕を持ったスケジュール管理をするため、そのことをうっかり忘れないよう、なるべく意識しながら生活しています。

Profile

角田千佳(つのだ ちか)

慶應義塾大学法学部政治学科卒業。2008年、新卒で野村證券に入社し、株式・債券等の営業に従事。2010年、株式会社サイバーエージェントにてPRプランニング業務の経験を経て、豊富な幸せの尺度を持った社会の実現を目指し、20135月に株式会社エニタイムズを創業。 同年末、家の掃除から家具組み立て、料理代行、など日常のちょっとした用事のスキルシェアサービス「ANYTIMES」をリリース。201910月には、複合型シェアサロン「Qnoir」を東京都港区北青山にオープンし、株式会社Qnoirの取締役に。国際的なビジネスコミュニティのNPO法人Startup Ladyの理事、株式会社アドベンチャーの監査役も務める。

ANYTIMES:https://www.any-times.com/
Qnoir:https://www.qnoir.com
Startup Lady:https://www.startuplady.org/ja/home

 

撮影/武石早代 取材・文/川端美穂