【ヒトとトキ#04】スマートメディア代表・成井五久実さん「大切なのは、自分の強みが発揮できることに時間を費やし、生産性を高めること」

28歳で起業し、1年後には女性起業家として最年少で最短期間つ最高の売却額で株式譲渡し、一躍時の人となった成井五久実さん。現在はメディアプラットフォーム事業を展開する「スマートメディア」の代表として多忙な日々を送っています。そんな成井さんの仕事&時間術を取材すると、独自のセオリーがありました。

「営業兼社長」は自分の強みを発揮できる天職です

 

ーースマートメディアの事業内容を教えてください。

成井五久実さん(以下、成井さん) PR会社「ベクトル」グループのメディア領域を担当している子会社になります。世界中のおもしろい動画やニュースを届ける「笑うメディア クレイジー」やファッションや自動車を紹介する「OPENERS(オウプナーズ)」など、ジャンルに特化したWEBメディアを10媒体運営し、月に合計1億PVを獲得しています。また、培った編集ノウハウを企業さまにご提供するために、オウンドメディア事業も開始。最近ではトヨタ自動車の「トヨタイムズ」などのコンテンツ制作も手がけています。

また、システム機能(CMS)を提供する「Clipkit(クリップキット)」は、月額5万円ですぐにメディアが立ち上げられる手軽さで、国内最大手のCMS構築プラットフォームに成長しています。

ーー従業員は何人ですか?

成井さん 50人です。ベクトルグループが買収したメディア5社が統合し、現在の編成になりました。コンテンツマーケティングを得意とする編集ディレクターや、clipkit のエンジニアなどが在籍しています。

 

 

ーー成井さんは、社長としてどんなお仕事をされているんですか?

成井さん 元々営業出身なんですが、社長になったいまも実は営業に携わっています(笑)。自らセミナー公演を開催してリード(見込み顧客)を獲得し、タイアップ広告やオウンドメディア支援につなげたり。セミナーは、メディア運営をしたい方に向けて、PV数の伸ばし方やコンテンツマーケティングなどのノウハウをお伝えしています。

ーー20歳頃から起業を夢見ていたとのことですが、なぜ社長業に憧れを?

成井さん 根っからのリーダー気質で、学生時代は生徒会長になることに憧れていました。責任あるポジションにつくほうが自分の個性が生きるし、責任が大きくなればなるほど頑張れるんです。社長の職につくことが自分の強みを一番発揮できる。さらに事業が社会に受け入れられると、自己実現に近づくと思っています。

社長という役職が、エネルギー値を高めてくれます

 

ーートラブルや困難などでストレスが溜まることはないですか?

成井さん ないですね(キッパリ)。新卒で入社した「DeNA」で当時社長だった南場智子さんから教わった、「雨が降っても自分のせい」という松下幸之助さんの言葉を大切にしています。たとえ外部要因による問題が発生しても、自分の責任だと思って前向きに対処していくことが大事。常に失望はしないです。イメージ的にはゲームでどんどんクエストが降ってきて、それをクリアしていく感じですね。

ーー大学時代は東大の起業サークルで活動。卒業後は「DeNA」や「トレンダーズ」の営業として大型案件を受注し、28歳で「JION」を起業。1年後にはベクトルに事業売却して社長就任と、常に多忙な日々を送られていますが、忙しさのピークはいつですか?

成井さん JION創業時は編集と営業を両方こなしていたので、てんやわんやでした。今までで一番働きましたね。スマートメディアの設立時も忙しくて。自分が営業で一番稼いで社内統制しようと思い、毎日アポを3〜5件こなしながら社長業をしていました。やっぱり、会社の立ち上げ当初は大変ですね。

ーー忙しくて気分が落ちたりしないんですか?

成井さん 落ちないです。社長という役職がエネルギー値を高めてくれるんです。もし社長ではなくなったら、やる気がなくなっちゃうと思います。ブランド品を買ったり、パーソナルジムに通ったりすることも私にとっては必要。好きなものに囲まれ、自分がキレイでいられると、エネルギー値が高まりますね。

営業やセミナーを全力で行い、アニメとお酒でパワーチャージ

 

ーータイムスケジュール表を用意したので、1日のスケジュールを書いてみていただけますか?

成井さん 起床は8時。着替えとメイクは30分で完了します。服装は結構こだわっていて、その日の予定に合わせてコーディネートしています。営業の頃から、クライアントの企業カラーに合わせたり、商談相手が男性のときはやわらかい雰囲気の服、年上の女性の場合はキリッとしたパンツスタイルなど、少しでも印象が良くなるよう工夫しています。いつか、『セックス・アンド・ザ・シティ』に出てくるキャリーの部屋のようなクローゼットを持つのが夢ですね(笑)。

 

 

ーー出社前にジムに行くんですね。

成井さん 週2〜3日は、パーソナルジムに通っています。8時半から1時間、筋トレしてから出社。実は30代に入って、太ってしまって……。昨年、結婚式を挙げるタイミングで10kgダイエットしたんです。それ以来、体型維持のためにジム通いしているんですよ。

ーーえっ、10kgのダイエット! すごいですね。運動以外にも何かされたんですか?

成井さん 1日のうち、筋トレやウォーキングで18002000kcalを消費して、摂取カロリーをだいたい1500kcalに制限しています。理論的には、1日の摂取カロリーが消費カロリーを上回らなければ太らないので。歩数や消費カロリーなどを管理できるスマートウォッチの「Fitbit」を使ってから、めっちゃ歩くようになりました。摂取カロリーに関しては、食品のだいたいのカロリー数を覚えているので、ざっくり頭の中で計算しています。

 

 

ーーランチはしっかり1時間とられるんですね。

成井さん 出社後、メールチェックと会議を終えたらランチです。1時間きちんととって、メンバーの誰かとお昼を食べるようにしています。メンタルチェックというほどではないですが、仕事だけでなくプライベートの話をすることも。ダイエットのこととか、私が相談に乗ってもらうことの方が多いんですが(笑)。

ーー帰宅後はオフですか?

成井さん 比較的そうですね。お風呂に入って、21時から寝るまでの間は「Netflix」を観たり、SNSをチェックしたり。Netflixで『進撃の巨人』などの主人公が頑張ってる系のアニメを観ると、エネルギー値が高まるんです。「うっうっ」ってときには泣くことも(笑)。あと、ソファに寝転んで、顔にパックしながらネットショッピングしたり。仕事のパフォーマンスを維持するために深夜1〜2時までには寝て、6時間は睡眠をとるようにしています。

 

 

ーー自宅ではご主人とくつろぐ感じですか?

成井さん 実はまだ週末婚なので、土日に彼の家へ行って一緒にお酒を飲むことが多いです。昨今はなかなかできなくて残念ですが、私、赤提灯で慎ましく角ハイを飲むのが一番好きなんですよ(笑)。

 

 

ーー週間スケジュールも書いてみていただけますか?

成井さん 1日のスケジュールに加えて、メディア取材を受けたり、資料作成時間を設けたり、イベントに参加したり、ですかね。

 

 

ーー週間スケジュールを見ても、やっぱりセミナーと会議がぎっしりですね……!

成井さん そうですかね? でも営業やセミナーがオンラインになって移動が省け、だいぶ効率的になりました。セミナーの資料は自分で話す内容を考えて作っています。あと、情報収集のために会食がとても重要で。コロナ禍以前には週に5日会食がありましたが、最近はかなり減りましたね。

「相手のニーズに最短で応える力」を武器にここまで来ました

 

ーー毎週決まったタスクはありますか?

成井さん 月曜の朝に3時間、親会社と経営会議を行います。事業トピックスや実績などの資料を作って発表しています。プレッシャーはとくになく、毎週のルーティンですね。

ーー成井さんの営業としての売りは何ですか?

成井さん コミュニケーション力でしょうか。自分で言うのもアレですが、相手のほしい言葉やほしいものが瞬時にわかるから、周りくどいことはせず、最短でニーズに応えるのが得意です。それは、母がカウンセリングルームを営んでいた影響かもしれません。相手の話し方や声色、顔色を読むことは子どもの頃から自然とやっています。

ーー日々の情報収集にはどんなツールを使ってますか?

成井さん Facebookでさまざまな事業の社長とつながっているので、タイムラインで最新の事業や業績を知ることが多いです。あとは、出社後にネットでニュースをチェックしたり、他社のメディアの動向をマネージャーから聞いたり。私は文字を読んで情報収集するよりも、会話のニュアンスから吸収するほうが得意。会話しながら気になったことはスマホでググって調べます。

自分に足りないところがあっても、仲間を増やせば起業できます

 

ーー成井さんの仕事時間との付き合い方をひとことで言うと?

成井さん 自分の強みが発揮できることしかやらない、です。こうして振り返ると、営業やセミナー、こうして取材を受けるなど、毎日好きなことだけやっていますね。社長だからできるのかもしれないですけど。苦手なことは苦手だとハッキリさせることは放棄ではなく、責任を取ること。苦手なことは自分でやるよりも得意な人に任せたほうが、事業は円滑に進みます。常に最善の手段を取ることが経営方針であり、自分の時間の使い方ですね。

ーー最後に、成井さんのような起業家を目指す方にアドバイスをいただけますか?

成井さん よく相談を受けるのですが、「自分に足りないところを埋めるまでは起業できない」と言う方が多くて。でも、今の私みたいに、自分に足りない部分は代わりに得意な社員を雇えばいい。私は話すことは得意ですが、文章を書くのは苦手。私がJIONを起業したときは、編集が得意な社員を2人雇って、3人でスタートしました。自分の強みを早期に理解して、そのスキルアップに時間を使うことが大事。自分に足りないところがあっても、仲間を増やせば起業できます。社長はマルチプレイヤーなのかというと、実はそうでもない。社長ほど尖っているというか、一芸に秀でた人が多いと思います。

ーー長所を伸ばすことが大事なんですね。

成井さん 誰でも長所があれば、短所もありますから。「強みを磨く」という一点突破のほうが効率はいい。プロジェクトに責任を持ってさえいれば、苦手なことを人に任せるのは全然悪くないと考えています。

 

 

Profile

成井五久実(なるいいくみ)

1987年福島県生まれ。東京女子大学文理学部心理学科卒業後、ディー・エヌ・エー(DeNA)に入社し、デジタル広告営業を経験。その後、トレンダーズに転職し、100社以上のPR・女性マーケティングを担当する。2016年、28歳でJIONを設立し、情報サイトを運営。会社設立から1年後、当時の女性起業家として最年少、最短期間、最高額で事業売却。現在は、ベクトルグループ傘下のスマートメディア社長を務める傍ら、女性起業家を支援する活動にも従事。著書に『ダメOLの私が起業して1年で3億円手に入れた方法』(講談社)。

スマートメディア:https://sma-media.com

 

撮影/武石早代 取材・文/川端美穂(きいろ舎)